top of page

スモキャピ BLOG

珠洲を歩くなら

 ひまなのでよく意味もなく出歩いたりする。

 定番といったら本屋だ。しかし珠洲で本屋といったら限られたもので、きちんと「本屋」といえるのは1軒くらいしかない。そこも数十坪ほどの小さな本屋なので、お目当の本がある場合の方が少ない。でも目当てがなくて本屋に行くんだから、別にそれでいい。意味もなくふらついて、背表紙の列を眺めたり、平積みの本の束を眺めたり、目に止まったものを手にとって、面白そうだと思ったりツッコミを入れたりしている。こういうことは本好きの人なら誰でもやっている休日の過ごし方だろうなと思う。なんとなくそこにいるだけで落ち着く。

 その本屋「いろは書店」は、本と文房具の他に、駄菓子を売っていたり、CDを売っていたりする。昔はレンタルビデオもやっていて、父と弟と3人でよく行った記憶がある。時代の波(?)に押され、今では売れ残りのCDを9割引で売り、十円ガムやチョコバットを片隅に置きながら、懸命に本を売っている。BGMには、最近ではよく「荒城の月」とか「蘇州夜曲」とかを流している。「こころのオアシス いろは書店」と銘打ったように、ぼくにとっても、その名のとおりのこころの拠り所となっている。

 それと同じ感覚で、ホームセンターにもよく行く。ムサシホームセンターだ。高い天井のだだっ広い空間に、シャンプーやら文房具やら犬の餌やら肥料やら長靴やら角材やら蝶番やらカーテンやらを並べている。ここで働く人たちはみんなこの全てを把握しているのだろうかと考えただけで気が遠くなる。

 そんな空間を歩くときの心地良さ。この感覚をわかるという人も多いと思う。圧倒的な数のモノに囲まれて、何を買うともなくふらつく。本屋で立ち読みだけはちょっと気がひけるけど、ホームセンターはそんな気遣いは必要ないから気が楽だ。だからぼくは、六角レンチや耐熱レンガや消せるボールペンや怪しく光る目覚まし時計や安い絨毯や使いもしない女性用シャンプーを眺めたりしている。存分に眺めたら、出口にある自販機でアイスを買い、ベンチで食べている。

 でも最近のおすすめはやはり見附島だ。詳しくは過去のブログを参照。観光地なので、行くと必ずといっていいほど人がいる(当たり前か)。寂しさを紛らわすのなら、いろは書店やムサシでもいいけれど、違う点は、ここにいる人たちはみな観光客ということ。基本的に珠洲の人はいないということだ。いろは書店の店員さんは顔見知りだし、ムサシに行くと結構な確率で知り合いに会う。というかだいたいどこに行っても知り合いに会う。あの人、乙脇さんとこの息子さん…平日の昼間に何しとるんやろ。そんなむさ苦しい珠洲に辟易したら、ぼくは見附島に行くのだ。よその人たちを眺めているだけで、ぼくまでよそに行ったような気分になれる。彼らと同じく、ぼくもまた異邦人なのだ。そこが気持ちいい。ただベンチに座ったり、何十回も見た見附島を写真に撮ったり、観光客を眺めたりしているだけで、いろんなことがどうでもよくなる。アイデアも浮かぶ。だから、ぼくはゆき場のない感情を抱えたとき、見附島に行くのだ。

 こうして書くとすごくつまらなそうだけど、これが楽しめるようになったら、珠洲の上級者といっていいだろう。陸の孤島・珠洲は、日常の楽しみ方も少し違うのだ。

Featured Posts
後でもう一度お試しください
記事が公開されると、ここに表示されます。
Recent Posts
Search By Tags
Follow Me
  • Twitter Classic
bottom of page