予期を愛す
——つぎの夜から 欠ける満月より
14番目の月が いちばん好き (荒井由美「14番目の月」)
ぼくは本を読むのが好きなのだけど、本を買うのも同じくらい好きだ。
積ん読が趣味というかなんというか、買い物が好きというのもないことはないだろうが、買うものがなんでもいいというわけではないだろう。本じゃないとだめだ。
本には中身がある。そして装丁がある。重みがある。質感がある。電子書籍にそれはないので、ぼくは電子書籍を読む分には問題はないが、買うのはあまり好きではない。あくまでモノとしての本がそこにあり、それを手に取って、内容に思いを馳せたり、これから読もうという思いを膨らませたりする時間が好きなのだ。読む前の時間が好きなのだ。これから読める!という期待を感じる時間が、とても愛おしく思う。
だから、期待しすぎて、読んでみてガッカリ……ということもよくあるが、そうならないためのバランスのとり方も最近身についてきたように思う。ほどよく期待して、ほどよく読む術を。
ぼくは同時に何冊か読むタイプなのだけど、同時に読んでいる本たちが一気になくなったりしたときに、さあ、この積ん読の山からどれを選ぼうかな……と眺める時間が好きなのだ。あれも読める、これも読める、おお、こんな本まであったのか!……できることならずっとでも眺めていたい。
それは宝くじと似ているかもしれない。宝くじファンはよく「夢を買う」と言う。当たったら何をしよう、あれを買ってこれを買って……と、あれこれ夢を膨らませる、その時間が好きなのだと。ぼくにとっての宝くじは、本だ。それも、ある程度の「当たり」が保障されている宝くじ。掛け金も数百円から、高くて3000円ほど。
何とも夢のある趣味だと思う。