芸と藝
永六輔の『芸人』という本で知ったことなのですが、「芸」と「藝」では意味が違うのだそうです。
「藝」の略字として使われがちな「芸」ですが、実はその意味は、草木などの植物や、それを育てることらしいのです。「園芸」とかがそれ。
ぼくたちが使っているゲイジュツ的な意味での「ゲイ」は「藝」なんです。
これは、練習して身につけた技のこと。「art」には「技術」という意味もあります。
芸術系の大学の最高峰は「東京藝術大学」という表記ですね。
だから、「文芸」ではなく「文藝」が本来なのでしょう。文藝春秋。
じゃあ、それをわかっていてなぜ「双芸舎」なのか、と。双藝舎じゃダメなのか。
いや、別にダメなわけではないのですが、ぼくはむしろ植物としての「芸」の字に魅力を感じたのです。
ぼくが詩を書き始めたのは、「よし! 詩でも書いて世間を驚かしてやるか!」
と勢い勇んでのことではありません。
書こうと思って作ったものではなく、あるときふと、なぜか生まれたのです。
それは、種の蒔かれた土に雨が降って、自然と芽が生えるように生まれてきました。
生む(産む)というよりは、生える(はえる)といった方がしっくりきます。
自然と、いつの間にか、そこにあるもの。
詩はゲイジュツ作品というよりは植物だと思ったのです。
そんなわけで、あえて「芸」の字を使っています。
知っている人からは、芸と藝の違いもわからないのかと言われそうですが、そういう意味がったのです。
そうんなふうに、種をまいて、水をあげたりしながら、やっていきたいと思います。